ご 挨 拶
日頃よりループフェンス研究会会員ならびにループフェンス工法をご支援いただき、厚く御礼申し上げます。
ループフェンス工法は支柱に取り付けた横方向のワイヤロープにエネルギー吸収装置を組み込む、いわゆる支柱強化型に分類される高エネルギー吸収型落石防護柵です。この形式の落石防護柵は平成の初期に日本独自の技術として金沢大学名誉教授吉田博らとともに開発したものであり、その後の根強いお客様からのご支持を得て現在に至っています。
欧米諸国での落石防護柵はリング状のネットに代表される、ネットの変形特性を重視した構造形式が主流ですが、日本の山岳道路の多くを占める、斜面に近接するような場面ではネットの変形を際限なく許容することはできません。
ループフェンスは2本の高靭性支柱間に巻き付けた1本のワイヤロープの交点を緩衝装置で止めたワイヤロープユニットを複数段配置し、阻止面として高強度金網を配したものが基本構造となっています。この構造によって、落石時の張り出し量を低減し、落石捕捉後の除去作業も簡便となります。
また、支柱強化型は日本独自に発展してきた高エネルギー吸収柵ではありますが、類似工法が世の中に出るたびに、それぞれ独自の構造原理や実験方法で性能をうたっているにすぎず、統一した性能評価方法がありませんでした。このことは性能設計を根拠とする資材調達における大きな課題でしたが、(公社)日本道路協会により2017年12月に改訂された落石対策便覧では実験による性能照査方法が示され、新型落石防護柵の性能設計におけるプラットホームが整うこととなりました。
ループフェンス研究会ではいち早く便覧基準で性能照査できる実験設備を整備し、各エネルギー基準の実験を実施してまいりました。また実験を補完できるよう大変形解析プログラムによってお客様のニーズに細かく対応できるよう努めております。
また近年では落石だけにとどまらず、多発する豪雨災害に伴う土砂災害向けの仕様も開発し、観光地などでは、コンクリートほど景観を損ねることのない対策工として広くご採用いただいております。
自然の力にはまだまだ力及ばない我々ですが、ループフェンス工法が落石や土砂による人的災害を未然に防ぐことができるたび喜びと感謝に満たされます。この思いが我々の原動力です。
これからも宿命的に自然災害の多い我が国の安全と安心に少しでも役立てていただけるよう研究会会員一同、日々、精進してまいる所存です。
ループフェンス工法はお客様によって育てていただいてきた工法です。今後とも一層のご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
ループフェンス研究会
会長 小林 大志